厚生労働省は、職場における腰痛の予防に向けた「腰痛予防対策チェックリスト」を公表しました。腰痛は1978年をピークに一時減少しましたが、医療・福祉分野や陸上貨物運送業では現在も高い発生率が続いており、全産業の中でも特に対策が求められています。
腰痛の主な原因は3つ
厚労省は、職場における腰痛の発生要因を次の3つに分類しています。
- 1.動作要因
重い物の持ち上げ、不自然な姿勢での作業、長時間同じ姿勢での仕事など、腰に過度な負担がかかる動作。 - 2.環境要因
寒冷な環境、暗い照明、滑りやすい床、狭い作業空間、車両運転による振動など、作業場所の物理的環境。 - 3.個人的要因
年齢、性別、体格、既往症(骨粗しょう症など)、十分な休息が取れない勤務条件といった個人の特性や健康状態。
厚生労働省が提唱する職場の腰痛対策の要点
- ・作業管理による予防
作業内容や環境を見直し、腰への負担を軽減します。具体的には、重量物搬送の自動化・省力化、不自然な姿勢を減らすための作業姿勢・動作の改善、無理のない作業時間・作業量の設定、具体的な作業標準の策定と見直しが挙げられます。また、適切な休憩を促し、靴や服装への配慮、作業環境の整備(温度、照明、床面、作業空間、機器配置、振動対策など)も重要です。 - ・健康管理による予防
労働者の健康状態を把握し、腰痛の予防と再発防止に努めます。これには、腰に負担のかかる作業に従事する労働者への定期的な健康診断、職場での腰痛予防体操の実施、腰痛で休職した労働者の職場復帰支援が含まれます。 - ・労働衛生教育の実施
腰痛の発生要因や予防策に関する知識を労働者に提供し、自ら予防に取り組む意識を高めます。特に、重量物取り扱い、長時間同一姿勢での作業、不自然な姿勢を伴う作業、介護・看護作業、車両運転作業などに従事する労働者に対しては、具体的な教育内容(発生状況、原因、リスク評価、低減措置、予防体操など)を提供します。 - ・心理・社会的要因への配慮と健康の保持増進
心理的なストレスや生活習慣も腰痛に影響するため、組織的な取り組みと個人の健康管理が求められます。具体的には、上司や同僚からのサポート、相談窓口の設置、十分な睡眠、禁煙、適度な運動、バランスの取れた食事、疲労回復・気分転換などが挙げられます。
腰痛予防は企業の生産性向上にも寄与
厚生労働省は、体調不良を抱えながら出勤し生産性が低下する「プレゼンティーズム」は、仕事を休業する「アブセンティーズム」よりも経済的損失が大きい可能性があると指摘しています。職場での腰痛予防対策は、労働者の健康維持とモチベーション向上だけでなく、労働生産性の向上にもつながり、結果として企業にとっても大きなプラスとなります。
詳しいチェックリストや事例集は厚生労働省の公式サイトで確認できます。
「腰痛予防対策チェックリスト」(PDF)(引用元 – 厚生労働省)
→https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001465054.pdf